建築コラム2024.10.01
家を建てるなら押さえたい!壁面後退とは
家を建てる上で「外壁後退」という制限があることはご存じでしょうか? 簡単にいうと、境界線から一定距離を空けなさい、という制限です。第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域では「外壁後退」が指定されていることが多く、できるたけ大きな家を建てたい場合の障害になります。今回は、この「外壁後退」について解説します。
外壁後退(がいへきこうたい)とは
都市計画法にて規定されている制限で、良好な環境を保持するために、外壁面と敷地境界線との距離との距離を定めている地域があります。用途地域では、第一種・第二種低層住居専用地域で指定されていることが非常に多いです。
具体的な外壁後退距離は、1mまたは1.5mとなります。
また、外壁後退でいう「外壁」とは、壁の外側をいいます。また、屋根の軒は外壁から出ていますが、この軒の出は含みません。あくまで建物周囲に空間を保つためのものだからです。また、お隣さんとの敷地の境目(隣地境界)からだけではなく、道路境界からも後退する必要があります。
外壁後退を設ける理由は、住宅の近接を避け、良好な住環境を形成するためです。敷地境界から距離を空ける事で、隣地建物からの圧迫感が少なくなります。また、周囲を空けることによって採光や通風の上での環境が向上します。更に、防災面でもいざ避難となった場合は周囲が通りやすい方がいいでしょう。
外壁後退のために空けた部分は、エアコンの室外機やエコキュートといった設備を置いたり、小さな物置を置くこともできます。また、外壁後退をして、建物周りに余裕ができれば、将来的に建物をメンテナンスするための足場を自分の敷地内で組むことができるので無駄にはなりません。
外壁後退の調べ方
外壁後退の有無は自治体の都市計画で調べることが可能です。都市経過は各自治体がインターネットに公開している場合がほとんどです。名古屋市の場合、「名古屋市都市情報提供サービス」で調べることが可能です。サイトにアクセスし、都市計画情報等のマップをクリックして、住所を入力後、調べたい土地の場所をクリックするだけでその土地に指定された都市計画の詳細や制限を知ることができます。
上の図は名古屋市緑区の地下鉄徳重駅付近、ユメリアにある緑区役所徳重支所を中心にしたものです。第一種低層住居専用地域である緑色が多いのですが、外壁後退は、特定地点をクリックして、詳細ウィンドウで知ることができます。
名古屋市では、第一種低層住居専用地域の中で、建蔽率が30%、40%の場合は外壁後退が設定されています。お隣さんと距離を必ず1m、または1.5m距離をとっているため、ゆったりとした住宅街が形成されているんですね。
用 途 地 域 | 建蔽率(%) | 容積率(%) | 外壁後退(m) |
第一種低層住居専用地域 | 30 | 50 | 1.5 |
100 | |||
40 | 60 | 1.0 | |
80 | |||
100 | |||
50 | 100 | ||
150 |
コンパクトな土地だと、この厳しい建蔽率、壁面後退によって、希望の間取りが取れない場合があるので注意が必要です。
「外壁後退」と類似の規定
建築基準法では、境界からの距離を定めています。(建築基準法第54条2項)その一方、民法でもお隣さんと離れて建物を建てることが定められています。その距離は50cm。(民法第234条(境界線付近の建築の制限)建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければならない。)都市計画で外壁後退の指定はなくても、50cmは離すことが最低限のルールとなっています。また、敷地に接している道路の幅が狭い場合(4m以下)、道路からさらに後退して建築しなければいけない規定があります。このように、後退に関する類似の規定はいくつかありますので、設計士に確認してくださいね。
外壁後退のまとめ
お隣さんと離れた方が、お互いの生活音が聞こえることも少なくなり、より住みやすくなりますが、土地の価格が高い地域では必然的に土地の広さが限られるため、建蔽率、容積率、壁面後退といったルールをクリアしながらどうしたら希望の間取りを建てられるかが勝負になります。土地を購入する際には、必ず購入前に設計士におうちをプランニングしてもらいましょう。
オームラ設計一級建築士事務所では、今回の例にあげた「土地がコンパクトかつ建蔽率・容積率が厳しい土地」といった狭小地での建築例もあります。狭小地が気になる方はぜひお問い合わせください。