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変形地に建てた実例

ホーム高低差のある土地・変形地に強い設計事務所敷地が狭くても“庭”を楽しみたい

敷地が狭くても“庭”を楽しみたい

ポイント

プライバシーが守られる屋上庭園

今回ご紹介するのは、約40坪の旗竿状の敷地に建てたお住まいです。車が約3台縦に駐車できる細長いスペースが続いた奥に建物用のスペースがあります。南側には5階建てのマンションが隣接しており、プライバシーや日当たりの確保が課題となる立地でした。

私たちがプランを計画するときに大事にしていることは、暮らしに屋外の風や光、緑を感じられる“余白”を作ることです。今回の場合は、屋上という空間を“庭”として活用できないか検討しました。住む方が使いやすい「屋上庭園」の事例をご紹介します。

 

【この敷地のデメリット】 敷地に庭がとれない

敷地は「旗竿敷地」と呼ばれる形状で、道路からの長いアプローチは駐車場スペースとなり、建物を建てられる場所は奥の限られたエリアのみです。限られた敷地内で、お住まいになられる子育て世代に必要な室内空間を確保しながら、屋外とのつながりをどう作るかが設計のポイントとなりました。

これまでにも傾斜地や狭小地で“庭”が確保できない場合に屋上庭園を採用してきた実績から、今回もその活用を検討。屋上を“庭のように楽しめる場所”として設計することで、自然とふれあえる時間を住まいの中に取り入れる工夫をしました。

 

【この敷地のデメリット2】マンションからの視線

隣接する5階建てのマンションからの視線も大きな課題のひとつでした。せっかく屋上庭園をつくっても、周囲から見下ろされる感覚があると、使いにくくなってしまいます。

 

そこで、屋上庭園を“活用しやすく、プライバシーにも配慮された空間”とするために、設計士が3つのポイントを工夫しました。

解決策

生活に馴染む屋上庭園

解決策 その1

階段室で隣人の視線を遮る

屋上に上がるための階段室(ペントハウス)を、マンションからの視線を遮る南側に配置しました。階段室がちょうど目隠しの役割を果たし、屋上に出たときの開放感と安心感を両立させています。

階段室の扉を開けると、空と街並みが広がる屋上庭園。近くの公園の緑も見え、季節ごとの景色の変化が楽しめるやすらぎの空間に仕上がりました。


空気の澄んだ日には、屋上庭園から遠くの山並みまで見渡すことができます。時には御嶽山が顔を出すことも。室内の窓からの景色とはまた違う、開放感のあるパノラマビューは、屋上ならではの特別な体験です。
ただ外とつながるだけでなく、「ここでしか得られない眺め」を暮らしの中に取り入れることも、大切にしたい設計視点のひとつです。

解決策 その2

2階LDKでアクセスしやすく

屋上庭園があっても、1LDKだと屋上までの階段が長くなり「階段を上がるのが面倒で結局使わなくなる」というケースもあります。そこで今回は、光が入りやすい2階にLDKを配置し、屋上との動線を短く設計することで、日常的に屋上が使いやすくなるよう工夫しました。

大高B棟_リビング

プールやバーベキューといったイベントも、LDKが近い方がなにかと便利です。日常の中でも、階段を登り屋上に出てぼんやり風に吹かれて過ごすことはもちろん、2階のベランダで干す場所が足りないくらい洗濯物が多い日は、この屋上庭園で大量に干すことも可能です。

大高B棟_屋上庭園

また、2階LDKにあるキッチン部分を勾配天井にし、屋上庭園に接する部分に小さな窓を設けました。天井高の高い明るいキッチンは居心地もよく、屋上に出ている人とのつながりを感じることもできます。

 

解決策 その3

緑の眺望を守る

名古屋市のように住宅開発が進むエリアでは、将来的に隣に建物が建つことも想定されます。そこで、屋上庭園から都市公園の緑が見える方角を中心に周辺を見渡す眺望をとる設計にしました。

この方向なら、将来的に視界が遮られる可能性がほぼなく、気持ちのよい眺望が保たれます。

限られた敷地でも、屋上庭園という選択肢を取り入れることで、暮らしに屋外とつながる“余白”を加えることができました。